
募集しても人が集まらない飲食店の採用を変える一番の近道は、求人媒体を増やすことでも時給を上げることでもなく、「フルシフトで何でもできる人」を前提にした募集の仕方そのものを見直すことです。業務を工程ごとに切り分け、短時間・特定の作業だけを任せる求人に変えるだけで、応募できる人の母数は大きく広がります。ここで紹介する工夫は業態やメニュー構成によって効果が変わるため、自店に合うかどうかは実際に小さく試しながら判断してください。
結局、何を変えれば応募が増えるのか——本質は「求人の見せ方」より「仕事の設計」
飲食店の求人が集まりにくい背景には、業界全体の人手不足という構造的な要因もありますが、募集要項の作り方そのものに改善の余地があるケースも少なくありません。「ホール・キッチン業務全般」のようにフルシフト対応できる人を前提にした一括募集は、フルタイムで働ける人にしか届かない求人になりがちです。
これに対して以前から指摘されているのが、業務を工程ごとに分解して考える発想です。ある企業向け解説記事では、来店客の案内・オーダー・調理補助・料理の提供・バッシング・レジ・席の清掃といった一連の業務を分けて整理し、接客経験のない人材でも特定の工程だけを担ってもらう採用方法が紹介されています。同じように、決済サービス大手の解説記事でも「仕込みだけ」「週3日、混雑時の2時間だけでもOK」のように業務を細かく切り分けて条件を変えることで、これまで応募に至らなかった層にリーチできるとされています。
つまり応募を増やす本質は、求人の見せ方を工夫することだけではなく、「フルタイムで何でもできる人」でなければ応募できない仕事の設計そのものを見直すことにあります。
既存の採用手段との違い
業務の切り分け方には段階があり、どこまで踏み込むかで運用の負担と柔軟さのバランスが変わります。
| 項目 | 従来型(フルシフト一括募集) | 業務を切り分けた短時間求人 | スポットワーク(単発バイト)の活用 |
|---|---|---|---|
| 特徴 | ホール・キッチン全般をフルタイムで担える人を募集する | 仕込み・ピーク時のホールなど工程ごとに短時間・限定シフトで募集する | タイミー等のアプリで1回単位の勤務を都度募集する |
| 強み | 育てば任せられる業務の幅が広い | 主婦・学生・シニア層など、フルタイムでは働けない層にも応募の間口が開く | 急な欠員・繁忙期のみ最短即日で人手を確保できる |
| 準備すること | 特になし(従来通りの体制) | 業務の棚卸しと工程ごとの仕分け、簡単な手順書の用意 | 教育の簡略化、固定スタッフとの連携ルールづくり |
いずれか一つに絞る必要はなく、コアとなる工程は固定スタッフが担い、切り出せる工程を短時間求人やスポットワークで補う「使い分け」が現実的な着地点になることが多いようです。
何から始めればいいか——業務を切り分ける4ステップ
- 一日の業務を工程ごとに書き出す:仕込み、ピーク時の接客・調理補助、レジ締め、清掃など、店が回るまでにどんな作業が発生しているかを一覧化します。
- 「誰でもできる工程」と「経験・判断が必要な工程」を仕分ける:以前の記事(仕込み時短について)でも触れた「自分にしかできない工程」と「任せられる工程」の仕分けは、実は採用の間口を広げる工夫としても働きます。仕込みの一部を「仕込みだけ、週2日2時間から」という求人に切り出せば、応募できる層が変わってきます。
- 誰でもできる工程を短時間・特定時間帯だけの求人として切り出す:「週3日、ランチのピーク2時間だけ」のように、時間帯と工程を絞った募集にします。
- 求人文言を具体的にする:「ホール・キッチン全般」といった曖昧な表現ではなく、実際の時間帯・工程・服装などを書き出すことで、求職者が働く姿をイメージしやすくなります。給与も「応相談」ではなく目安を示すことが望ましいとされています。
このステップを踏むと、「フルシフトで動ける人が来るまで待つ」以外の採用の選択肢が具体的に見えてきます。
ソエノができる支援
株式会社ソエノの代表・添野博文は、栃木県宇都宮市で複数店舗の飲食店を10年以上にわたり現役で経営しながら、慢性的な人手不足と向き合い、採用条件や業務分担を何度も見直してきました。その実務経験から、「自店ではどの工程なら切り出せるか」「フルタイムでなくても任せられる業務はどこか」を、実際の店舗運営を踏まえて一緒に整理する伴走ができることが強みです。経営改善コンサルティングのメニューで、人材マネジメントの一部としてサポートしています。うちの店だとどう考えればいいか分からない、というところからの相談も、まずは無料相談やLINE公式アカウントから気軽にお聞かせください。
気をつけたいこと・よくある失敗パターン
業務を切り分けすぎると、誰も店全体の流れを把握していない状態になり、繁忙期に工程同士の連携が乱れるリスクがあります。切り分けたポジションごとに「誰が全体を見るか」を決めておくことが欠かせません。
また、スポットワークだけに頼り切ってしまうケースにも注意が必要です。単発バイトは毎回新しい人が入る前提のため教育の手間がかかりやすく、常連スタッフのような連携も期待しにくいとされています。固定スタッフを完全に置き換えるものではなく、あくまで固定スタッフを軸にした補助的な活用にとどめる考え方が現実的です。
まとめ
- 応募が来ない飲食店の採用を変える本質は、求人の見せ方より「フルタイムで何でもできる人」を前提にした仕事の設計を見直すことにある
- 業務を工程ごとに切り分けて短時間・限定シフトの求人にすると、これまで応募できなかった層にも間口が開く
- 業務の切り分けは、以前の仕込みの記事で触れた「任せられる工程」の仕分けと発想がつながっている
- スポットワークは補助的な手段であり、固定スタッフを軸にした使い分けが現実的な着地点になりやすい
FAQ
Q1. 短時間勤務のスタッフばかり増やすと、現場が回らなくなりませんか?
A. 全員を短時間勤務に切り替える必要はありません。コアとなる工程は固定スタッフが担い、切り出せる周辺工程だけを短時間求人で補う「使い分け」が現実的です。誰が全体の流れを見るかを決めておくことで、連携の乱れは防ぎやすくなります。
Q2. スポットワーク(単発バイト)だけで人手不足は解消できますか?
A. 単独での解消は難しいとされています。教育の手間がかかりやすいことや、常連スタッフのような連携が期待しにくいことから、固定スタッフを軸にした補助的な活用にとどめる「ハイブリッド型」の運用が現実的とされています。
Q3. 求人を出しても応募自体が来ない場合、まず何を見直せばいいですか?
A. 「ホール・キッチン全般」といった曖昧な仕事内容の記載を、実際の時間帯・工程まで具体化することから見直すのが有効とされています。あわせて給与の目安やシフトの柔軟性を明記し、そもそも業務を切り分けて短時間求人として出せないかも検討する価値があります。