「そこそこ美味しい」お店が価格帯のわりに選ばれないとき、原因の多くは味の完成度ではなく、その店を選ぶ理由が外から見えていないことにあります。近い価格帯・近い品質の店が並ぶ商圏では、味をさらに磨く努力よりも先に、すでにある強みを言葉にして繰り返し伝える工夫のほうが効いてくる場面が少なくありません。ここでいう「選ばれる理由」とは、大掛かりな改装や新メニュー開発を指すのではなく、日々の接客・空間・発信の中にすでにある要素を整理して一貫させることだ、という前提から話を進めます。
結局、何が違うのか――「美味しい」は前提条件であって、選ばれる理由そのものではない
「美味しくすればいつか伝わる」という考え方には落とし穴があります。ある飲食経営者向けの解説記事では、美味しい料理は来店した客にリピートしてもらうための前提条件であり、まだ店を知らない新規客を引き寄せる仕組みそのものではないと指摘されています。味の改善は既存客の満足度を底上げしますが、地図アプリや通りすがりで初めて店を比較検討する人にとっては、そもそも味を確かめる前の段階で「この店を選ぶ理由」が必要です。
同じ価格帯には、すでに一定の技術を持った店が並んでいることがほとんどです。そのなかで、価格やメニューだけでなく、店の雰囲気・接客の一貫性・店主の考え方といった要素が「選ばれる理由」として重視されやすくなっているという指摘も見られます。複数店舗を現役で運営してきた実感としても、個人店・小規模店は大手チェーンほど画一的な運営をしなくてよい分、こうした世界観の作り込みが効きやすいと感じています。つまり本質は、味の完成度を競うことではなく、「なぜこの店なのか」を一言で説明できる状態を作れているかどうかにあります。
既存のやり方との違い
「選ばれる理由」を作るという発想は、他の一般的なアプローチと何が違うのかを整理します。
| 項目 | 味の改善に投資し続ける | 価格を下げて対抗する | 選ばれる理由を言語化し発信する |
|---|---|---|---|
| 主に効く相手 | 既に来店した客のリピート意欲 | 価格で比較検討している見込み客 | まだ知らない人・比較検討中の新規客 |
| 効果の持続性 | 一定だが、近い価格帯の店にも模倣・追随されやすい | 値下げ合戦になりやすく、利益を圧迫し続ける | 積み重ねるほど模倣されにくくなりやすい |
| 必要な投資 | 仕込み・技術への継続的な投資 | 単価を下げる分の利益の圧縮 | 接客・空間・発信のトーンをそろえる継続的な工夫 |
3つは対立するものではなく、味の改善は前提として続けながら、価格勝負に偏り過ぎず、選ばれる理由の言語化と発信を並行させることが現実的な組み合わせです。特に価格を下げる対抗策は、いったん始めると元の価格に戻しづらく、利益を残しにくい体質になりやすい点に注意が必要です。
自社ではどう判断すべきか――選ばれる理由を自分で見つける視点
自店の「選ばれる理由」は、外部のコンサルタントに一から作ってもらうものというより、すでに店の中にある要素を見つけて言葉にする作業に近いといえます。次のような視点から始めると整理しやすくなります。
- 常連客に直接聞く:「なぜこの店を選び続けているか」を、アンケートではなく会話の中で聞いてみます。オーナー自身が想定している強みと、客が実際に評価している理由がずれていることも珍しくありません。
- 一見客と常連客の来店理由を比べる:一見客は価格や口コミの評価で来店し、常連客は別の理由で通い続けていることが多く、そのギャップこそが言語化すべき「理由」の手がかりになります。
- 口コミ・SNSに書かれている言葉を集める:自分が伝えたいつもりの強みと、実際に書かれている言葉が一致しているかを確認します。ずれている場合は、伝え方そのものを見直す余地があります。
- 見つかった理由を接客・空間・発信のトーンに一貫させる:メニュー表の言葉遣い、内装の雰囲気、SNSでの発信内容がばらばらだと、せっかく見つけた理由が伝わりにくくなります。
これらは一度で完成するものではなく、小さく試しながら磨いていく作業だという前提で取り組むことをおすすめします。
ソエノができる支援
株式会社ソエノ代表の添野博文は、複数店舗を現役で経営しながら、味の改善を重ねても新規の客足が思うように伸びない、という壁に何度もぶつかってきました。そうした実務経験から、自店の中に埋もれている「選ばれる理由」の候補を一緒に洗い出し、LINE公式アカウントやInstagram、Webサイトといった発信のトーンをそろえるところまで、実際に手を動かしながら伴走できることが強みです。トータル・ブランディングのメニューでは、SNS運用や発信の一貫性づくりを含めてサポートしています。何が自店の強みなのか自分でもうまく言葉にできない、という段階からの相談も、まずは無料相談やLINE公式アカウントから気軽にお聞かせください。
気をつけたいこと・よくある失敗パターン
差別化を意識するあまり、発信の内容がちぐはぐになってしまうケースもよく見られます。たとえば、高級感のある内装写真を発信する一方で、頻繁に割引クーポンを配信してしまうと、店が伝えたい世界観と実際の訴求がずれ、かえって「結局は価格で選ばれる店」という印象を強めてしまいます。
また、「良いものを作れば、いずれ気づいてもらえる」という受け身の姿勢も注意が必要です。味や商品の完成度を高めることと、それを新規の客に知ってもらう工夫は別の取り組みであり、どちらか一方だけに時間を投資し続けると、店の努力が外に伝わらないまま埋もれてしまうリスクがあります。
まとめ
- 「そこそこ美味しい」だけで選ばれないのは、味が足りないからではなく、選ばれる理由が外から見えていないことが多い
- 美味しさは既存客のリピートを支える前提条件であり、新規客を引き寄せる仕組みそのものではないという視点を持つ
- 選ばれる理由は一から作るものではなく、常連客の声や口コミの中からすでにある要素を見つけて言語化する作業に近い
- 見つけた理由は、接客・空間・発信のトーンに一貫させて初めて伝わる
FAQ
Q1. そこそこ美味しい程度の味でも、選ばれる理由は作れますか?
A. 作れる可能性はあります。選ばれる理由は味の完成度そのものではなく、店の雰囲気・接客・発信の一貫性から生まれることが多いため、まず味以外の要素を整理することから始められます。ただし業態や立地によって効果の出方は変わるため、断定はできません。
Q2. 選ばれる理由を作るのに、どのくらいの期間がかかりますか?
A. 一律の期間は言えません。常連客への聞き取りや口コミの確認はすぐに始められますが、見つけた理由を接客や発信に一貫して反映させ、外部からの認知が変わっていくまでには、継続的な取り組みが必要になります。
Q3. 何を発信すればいいか分からない場合、まず何から手をつければいいですか?
A. 新しい発信内容を考える前に、常連客に「なぜこの店を選んでいるか」を聞き、口コミやSNSに実際に書かれている言葉を集めることから始めるのがおすすめです。自分が思う強みと、客が実際に感じている理由のズレを確認してから発信内容を組み立てると、遠回りになりにくいです。